石川】次に、選ばれる県立高校づくりに向けた取組みについてです。
6月、県内公立高校が一堂に会する学校説明会「全公立展」に伺いました。今年は145校が出展し、来場者数は過去最多の4万364人に上り、農業・工業系高校の実演や部活動紹介などで各校の特色を中学生と保護者にわかりやすく紹介され、高校進学を目指す中学生と保護者にとって本格的な学校選びが始まっています。こうした中、来年度から私立高校の実質授業料無償化が始まります。東京都では、昨年度から所得制限なく私立高校等の授業料支援が行われたことにより私立高校の人気が高まり、都立高校第一志望者の割合が2025年度は60%を割るなど私立志向が加速しています。県内の中学生・保護者にとっても、授業料無償化により進路選択に伴う費用負担の不安が軽減され、「行きたい学校に行く」という意識が高まることが予想されます。この状況は、県立高校の在り方を改めて問う時期に来ていると考えます。
大阪府では、少子化による定員割れが続く府立高校について、今後15年間で適正数を約32校減とする試算が示されました。一方、北海道では普通科フィールド制やアンビシャススクール、長崎県では離島留学コースなど、全国には特色ある教育を打ち出す事例や、不登校生向け特例校も見られます。こうした工夫により、生徒の関心や進路希望に応じた学びを提供するとともに、教育機会の確保や地域の活性化にもつなげています。本県では、県立高校改革実施計画(Ⅲ期)の推進による指定校制度や再編統合が進むものの、特色づくりや魅力発信をより一層強化していくことが課題と考えます。東京都の事例では、偏差値40〜50台の都立高校の生徒層が、特に私立高校を進学先として選ぶ傾向が強まっているとされています。本県でも同様の傾向が見られた場合、県立高校の安定運営や定員確保に影響するおそれがあります。今後、県立高校が「選ばれる学校」となるためには、特色ある授業や探究活動、ICTの活用、進路相談や部活動の充実を通じて、生徒が「ここで学びたい」と思える環境づくりを進めることが必要ではないでしょうか。
そこで教育長に伺います。今後の生徒数変化や私立志向の高まりを踏まえ、県教育委員会として来年度以降、県立高校の魅力向上にどのように取り組むのか。また、特にいわゆる学力中間層の受検生にとって選ばれる県立高校づくりに向けた具体策を伺います。

教育長】教育関係のご質問にお答えします。選ばれる県立高校づくりに向けた取組みについてお尋ねがありました。県立高校には、入学希望者が、自分の適性に応じて、適切な選択ができるよう、幅広い進路先を用意しておく役割があります。そのため県教育委員会では、工業等の専門高校をはじめ、学力向上進学重点校や、生徒の学習意欲の向上を図るクリエイティブスクールなど、県立高校に多様な進路先を設けてきました。また、ICT利活用やSTEAM教育、グローバル教育の研究推進校や、インクルーシブ教育実践推進校など、様々な指定校事業を行っています。
さらに、全ての学校にコミュニティスクールを導入し、地域と連携した学校づくりに取り組んでいることも、県立高校の大きな特色です。こうした中、いわゆる高校無償化による、公立離れについて、現時点で予測することは困難ですが、県教育委員会では引き続き、指定校事業等を通じ、各学校の特色を生かした学びを推進していきます。また、再編統合や老朽化対策に継続して取り組むとともに、今後、国が示す「高校教育改革に関するグランドデザイン」も踏まえ、学力中間層を含めて、より多くの生徒に選ばれる県立高校づくりに、しっかりと取り組んでまいります。

石川】先ほどの答弁では、残念ながら、申し訳ないですが危機感があまり伝わってきませんでした。東京都や大阪府の事例を見ても、今後さらに私立高校を選ぶ傾向が強まると考えられます。例えば私の選出いただいている麻生区の麻生総合高校では、ドローン活用講座を実施して、操縦体験ができるという特色があります。公立展でもドローンを飾って展示してPRしていたこともありました。また、麻生高校では、ギターや陶芸、今はバイオリンを選択できて、卒業時には演奏や作品づくりの技能を身に付けられる。このように、各校には独自の特色があって、部活動も含めて、それを生徒の視点で打ち出すことが重要だと考えますが、教育長の見解を伺います。

教育長】教育関係の再質問にお答えします。まず、選ばれる県立高校づくりについて、お尋ねがありました。先ほども答弁しましたとおり、現時点で、いわゆる公立離れについて、予測することは困難ですので、県教育委員会では、様々な指定校事業等によって、引き続き、県立高校の特色づくりを図っていきます。また、議員から例示をいただきましたけど、部活動も含めて、各学校、様々な特色を持っています。これまでも、全公立展や学校説明会などで、在校生も参加しながら、中学生や保護者にPRしています。こうした取組を継続していきます。

石川】県立高校には、改革を進めるとともに、私も先ほど申し上げましたけども、生徒の視点で、教育委員会の視点ではなくて、生徒の視点でしっかりとPRをしていただきたい。そして、学校のホームページ等々もそうですけれども、やはりまだまだそのPRが弱いというふうに思っています。生徒の「ここで学びたい」という気持ちを尊重し、各校の強みを生かした学びを支援する環境づくりをぜひ求めておきます。