質問の第2は、「かながわの未来を支える取組み」について伺います。
はじめに、オーバーツーリズム対策と持続可能な観光の推進についてです。
政府は先ごろ、2030年に訪日外国人観光客数の年間目標を6000万人とする方針を示しました。日本政府観光局の調査によれば、2024年の全国の訪日外国人観光客数は3687万人で過去最多を更新し、観光庁の宿泊旅行統計によると、本県の延べ外国人宿泊者数は442万泊となっています。仮に全国で6,000万人が実現した場合、あと5年弱で本県への来訪者も単純計算で現在の約1.6倍に増える可能性があり、すでに混雑や生活環境への影響が生じている地域では、深刻な事態が懸念されます。鎌倉や箱根、湘南などの人気観光地では、路線バスや江ノ電が観光客で満員となり、地域住民に大きな影響が出ているケースも報告されています。宿泊施設では慢性的な人手不足により稼働率を制限せざるを得ない状況があり、受け入れ体制の限界が迫っています。さらに、路上での写真撮影や飲食、ゴミのポイ捨て、住宅地への立ち入りなど、一部外国人観光客のマナー違反も地域住民との摩擦を引き起こしています。
我が会派はこれまでこうした現場の課題を繰り返し指摘してきましたが、観光客数の急増が続けば、地域の生活環境や公共サービスが圧迫され、県民の観光施策に対する不満が高まる恐れがあります。観光による経済効果を最大限生かすためには、地域住民と観光客が共存できる環境整備がこれまで以上に不可欠と考えます。
第5期神奈川県観光振興計画では、観光客誘致が主要な経済施策と位置付けられていますが、今後は「いかに多く呼び込むか」ではなく「いかに受け入れるか」への発想転換が必要と考えます。県がこれまで行ってきたスマートフォン位置情報を活用した観光動態分析や観光地の分散化施策は一定の効果があるものの、それだけでは輸送力や人員不足、マナー問題を解消できません。地域の交通事業者や宿泊業界、商店街との連携、人材確保の支援、マナー啓発や常駐スタッフによる案内体制の整備など、現場の実情に即した対策が求められます。また、こうした取組みを進めるにあたっては、施策の目的や効果を県民にわかりやすく示し、理解と協力を得ながら進めることが不可欠です。

そこで知事に伺います。県は、現在の観光客数と政府目標を踏まえ、今後大幅な増加が見込まれる観光客による地域住民への影響、いわゆるオーバーツーリズムをどのように認識しているのか。また、路線バスの混雑や宿泊業の人手不足、外国人観光客のマナー違反など現場で顕在化している課題に対し、持続可能な観光をどのように推進していくのか、所見を伺います。

黒岩知事】かながわの未来を支える取組みについて何点かお尋ねがありました。まず、オーバーツーリズム対策と持続可能な観光の推進についてです。
はじめに、オーバーツーリズムの課題認識についてです。外国人を含む観光客は、本県でも増加傾向にあり、令和6年の入込観光客数は2億800余万人でしたが、そのうち横浜・鎌倉・箱根の3市町で9,800余万人と、約5割を占めています。観光客が集中している鎌倉市や箱根町などの一部では、混雑やマナー違反等の影響が生じていると認識しています。そこで、オーバーツーリズムの発生を防ぐため、例えば、市町村に対する観光客来訪状況等の分析結果の提供のほか、かながわ観光連携エリアの認知度や回遊性を向上させる取組への支援等により、観光客の分散・周遊を図ります。
次に、持続可能な観光の推進についてです。観光振興を進める上で生じている課題、例えば、宿泊業等の人手不足に対しては、就職面接会の開催や、業務効率化を目的とするDX導入への補助等により、事業者を支援していきます。また、外国人観光客のマナー違反に対しては、観光情報ウェブサイトやSNSを活用し、日本の慣習やルールを多言語で発信するなど啓発に取り組みます。このように、観光振興に伴う諸課題の解決に向けて、市町村や観光事業者等と連携して取り組むことで、持続可能な観光の実現につなげてまいります。

石川】先月、県から、令和6年の入込観光客数が2億806万人となり、過去最高を更新したとの発表がありました。今後さらに観光客の急増が見込まれる中で、今後はどれだけ多く呼び込むか、から、どのように受け入れるかへの発想転換が必要だと考えます。地域社会と観光が共存できる持続可能な観光施策を強く求めます。