石川】次に、宇宙関連産業を通じた県民生活への還元についてです。
宇宙関連産業は、人工衛星やロケットといった宇宙機そのものの開発・製造にとどまらず、人工衛星から得られるデータの活用など、私たちの暮らしに直結する分野としても大きな期待が寄せられています。これまで人工衛星は、GPSをはじめとする測位システムや、衛星放送を含む通信などに活用され、社会生活の利便性向上に大きく貢献してきました。加えて、人工衛星に搭載された光学センサーやレーダーから得られる衛星データについても、気象衛星を活用した天気予報を代表例として、実社会に幅広く役立てられてきました。近年では、宇宙からの高解像度観測技術や、人工知能をはじめとするデジタル技術の発展により、衛星データを組み合わせた新たな課題解決の手法が生まれ、その市場も拡大しつつあります。宇宙で得られるデータの利活用や、宇宙技術を地上に応用する「スピンオフ」については、今後ますます社会での活用が進み、その可能性はさらに高まっていくと考えられます。
こうした中、県では令和7年度予算において約1億4,000万円を計上し、宇宙関連産業クラスターの形成強化に取り組んでいます。具体的には、県内企業の参入を後押しするため、宇宙関連企業等が交流できる拠点の整備や、機運醸成や連携強化を図るビジネスカンファレンス「宇宙サミット」の開催などを計画していると承知しています。宇宙関連産業は今、商業活動の拡大など大きな構造変化の途上にあり、県としてもその可能性を模索している段階であることは理解しています。しかしながら、予算を投じる以上、県民生活への還元という視点は極めて重要であり、その具体的な可能性を示していくことで、県民の理解と共感につなげていくことが必要と考えます。
そこで知事に伺います。本県において、宇宙関連産業を通じた県民生活への還元について、どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。

黒岩知事】最後に、宇宙関連産業を通じた県民生活への還元についてです。
政府は、宇宙関連産業を日本経済における成長産業とするため、2020年に4兆円となっている市場規模を、2030年代の早期に2倍の8兆円に拡大していくことを目標としています。これは、約10年間で2倍というスピードの速い市場拡大目標であり、中でも、様々な課題の解決に向けた新たな手法として衛星データなどを利用する宇宙ソリューション産業が期待されています。こうした背景も踏まえ、県は今年度から、施策の方向性などについて意見を伺うための「有識者会議」や、情報発信・機運醸成のための「宇宙サミット」の開催、衛星データの活用事例の増加に向けた事業化支援などに取り組んでいます。県の施策により、企業などが、成長が見込まれる宇宙関連産業に目を向け、新規参入を含めて取組を強化することにつながれば、経済活動や雇用機会の拡大を通じ、県民生活に還元されると考えています。
また、衛星データについては、先日、AIを活用した農産物価格の将来予測などの取組について、事業化支援を決定したところであり、将来これらのサービスが実現すれば、県民の暮らしの向上にもつながると期待しています。引き続き、県民生活への還元につなげることを意識しつつ、宇宙関連産業の振興に向けて、的確な施策を検討・実施してまいります。