石川】質問の第1は、「かながわの未来を創る取組み」について伺います。
はじめに、人口ビジョン及び総合戦略の改訂を踏まえた人口減少対策の再構築に ついてです。
県では2015年度に「神奈川県人口ビジョン」を策定し、2050年に合計特殊出生率2.07を実現することを長期的な目標として掲げ、少子化対策や若年層の定住促進、子育て環境の充実など、多様な施策に取り組んできました。我が会派は、昨年6月の代表質問の中で、当初2027年までに出生率1.42を目指すとしていた目標の進捗を踏まえ、これまでの施策の検証と今後の効果測定の必要性を求めるとともに、次回の人口ビジョン改訂時に目標が先延ばしされたり、数値が引き下げられたりするのではないかという懸念を申し上げました。
そして、本年3月に改訂された新たな人口ビジョンでは、合計特殊出生率の最終目標2.07は維持されたものの、その達成年は2065年へと15年先送りされ、2040年に1.50、2050年に1.70、2060年に1.97といった仮定値が示されました。さらに、直近の目標値である2027年の出生率は、これまでの1.42から1.18へと引き下げられ、我が会派が懸念していた通りの展開となっています。こうした変更は、昨年度実施した県民意識調査により算出した希望出生率であるなど、客観的なデータに基づく見直しであることは理解しています。しかし一方で、目標達成時期が先送りされ、水準が引き下げられたことについては、強い危機感を抱いています。
出生率の数値目標を見直すことも大切ですが、重要なことは、これまで県が県税を投入して進めてきた施策の成果を検証することです。効果のあったものは継続・強化し、期待された効果が得られなかった施策は見直すなど、人口減少対策を再構築していく必要があります。例えば、若者の結婚支援、保育環境の整備、仕事と子育ての両立支援といった施策ごとに、成果や課題を具体的なデータで「見える化」している事例もありますが、県民によりわかりやすく説明する責任があると考えます
そこで知事に伺います。昨年度に人口ビジョン及び総合戦略を改訂し、出生率の数値を見直しましたが、これらの改訂に当たり、これまでの施策の進捗や効果をどのように評価・分析したのか。また、新たに設定された仮定値や、2065年2.07という出生率の長期的な目標の達成に向けて、どのように進捗管理を行い、今後の施策にどのように反映し総合戦略を進めていくのか、所見を伺います。

黒岩知事】石川議員の御質問に順次お答えします。「かながわの未来を創る取組み」について、何点かお尋ねがありました。まず、人口ビジョン及び総合戦略の改訂を踏まえた人口減少対策の再構築についてです。
はじめに、昨年度、県の総合戦略等の改訂に当たっての、施策の進捗や効果の評価・分析についてです。県は、戦略等の改訂に当たり、有識者の意見や県民意識調査等を踏まえ、その取組を評価・分析しました。有識者からは、これまでも、デジタルを活用するなど、工夫を行いながら取組を進め、一定の成果を上げたものの、県も人口減少局面に入り、より一層の対応が求められるとの評価をいただきました。県としては、出生率の低下は、出産育児の経済的負担への不安や、コミュニティの希薄化など複合的な要因があり、県だけでなく、国とも連携し、あらゆる主体が一丸となって取り組む必要があると分析しています。
次に、出生率の目標達成に向けた進捗管理と施策への反映についてです。総合戦略のKPIには、妊娠・出産・子育てを支える取組に関する指標を設けており、これらの施策を着実に進めるとともに、よりきめ細かく進捗を把握します。そして、進捗や成果を検証するため、KPIの達成状況に加え、様々な取組の結果を勘案した総合的な評価を行い、政策改善につなげていきます。県としては、しっかりとPDCAサイクルを回しながら、市町村や県民の皆様、企業、団体など、オール神奈川で総合戦略の取組をより一層推進してまいります。

石川】国の調査によると、妻が25歳未満で結婚した夫婦の平均子ども数は2人を超える一方で、30歳~34歳で結婚した夫婦では約1.6人と、2人を大きく下回っています。また、結婚後5年以上経過した夫婦の出生子ども数が低下しているという報告もあります。こうした国のデータを県としてどのように活用し、出生率の目標達成に向け、どのように取り組んでいくのか伺います。

黒岩知事】出生率の目標達成に向けた県の取組についてお尋ねがありました。本県については、平均初婚年齢が30歳を超えて高止まるなど、晩婚化、晩産化が進んでいます。そのため、不妊治療を受ける人が増えていることから、妊娠、出産の適齢期を踏まえたライフプランの構築を支援するため、学校や企業への出前講座やホームページ等で情報発信し、「プレコンセプションケア」を進めていきます。また、若い世代の経済的基盤の安定や就労に向けた相談・支援の充実を図るほか、市町村等と連携した結婚支援等に取り組みます。このように、総合戦略に掲げた様々な分野の取組を推進することで、出生率の目標達成に向け、着実に取り組んでまいります。

石川】人口ビジョンの実効性を高めるためには、施策ごとの達成状況を数値で示すとともに、出生率の高い自治体もあることから、そういう事例を調査し、できれば職員のフィールドワークや人材交流を進めることが重要と考えます。こうした学びをふまえて、県の政策の改善と再構築を求めておきます。