石川】まず初めに、新型コロナ宿泊療養施設の検証と総括についてです。

私は、これまでも第5波、6波、7波などコロナの波があった中で、この波の収束期において、県が行ってきた新型コロナ対策の検証と総括を求めて来ました。今回は、宿泊療養施設について伺います。

先月の5月8日、新型コロナの感染症法上の分類が2類相当から5類に引き下げられ、県としての宿泊療養施設の取扱いは終了しました。軽度や無症状の患者の方が利用されてきた宿泊療養施設事業には、令和2年度から4年度までの3年間で約380億円が費やされ、施設の維持と確保が行われました。

新型コロナ発生当初、この宿泊療養施設は、みなとみらい地区にある2,000室以上の大型ホテルを借上げて運営されていました。しかし、大型ホテルでは県職員や看護師等の運営スタッフを集約配置できるというメリットがある一方で、2,000室以上の部屋を効率的に利用することは困難であり、無駄が生じていたとの理由で、のちに横浜、川崎、相模原、厚木などの拠点ごとに200室前後のホテルを複数借りるようになりました。また、療養者の利便性や搬送距離、自然災害時の県内交通の分断リスクなども考慮されたと理解しています。当時、その都度検討を重ね、事業を進めてきたことは理解しています。

一方で、宿泊療養施設の稼働率は、令和3年のデルタ株が流行したピーク時で52%となりましたが、その後の第6波のBA1や第7波のBA5とされるオミクロン株の流行の際、第7波では、医療機関のご尽力により、県が確保した中等症病床数を超える即応病床を準備して頂く状況になったにもかかわらず、宿泊療養施設においては低い稼働率が続きました。

この点については、例えば、宿泊療養施設を分散したことが理由であったのか、施設の数が多かったのか、又は、療養施設の利用基準が厳しかったのかなどさまざまな角度からの検証が必要だと考えます。

さらに、冒頭申し上げたように、大型ホテルとホテルを分散した際の運営スタッフの配置状況を比較し、スタッフ不足によって受入れが制限された状況はなかったのか、効率的な運営が行われたのかどうか評価・検証する必要があります。私は、この検証と総括を行った上で、今後の感染症対策に向けての運用指針、具体的な方法を検討し、関係事業者との連携や協力を早急に求める必要があると考えます。

そこで知事に伺います。

新型コロナの宿泊療養施設の取扱が終了した中で、これまでの運用をどのように評価しているのか。また、関係事業者等を含めたこれまでの検証と総括が早急に必要と考えますが所見を伺います。その上で、今後の感染症対策の運用指針等を作成し、関係事業者に協力の依頼を進めていくべきと考えますが所見を伺います。

 

黒岩知事】「新型コロナウイルスとの共存」これからのかながわについて、何点かお尋ねがありました。
まず、新型コロナ宿泊療養施設の検証と総括についてです。
はじめに、これまでの運用の評価についてです。
当初はウイルスの特性もわからない中、最悪の状況を想定し、大規模なホテルの協力も得て、県内2か所で受入規模の確保を図りました。その後、自宅に近い場所を望む声が多いことから、最大で県内13か所に宿泊療養施設を開設し、延べ約4万人の患者を受け入れてきました。入所者が少ない時期もありましたが、これは感染対策上、1棟単位で借り上げたためであり、希望する方すべてを、概ね希望する地域で受け入れたことも含め、適切な運用であったと考えています。
次に、関係事業者を含めた検証と総括です。
各施設は、当初県職員が直接運営していましたが、令和3年度からは包括的に外部に委託し、効率化を図りました。この中で、ホテルや運営委託先とは随時意見交換を行い、例えばスタッフの導線や入所者への説明方法など、現場の意見を踏まえて見直しを行ってきました。今後、こうした事業者からも改めて意見を聞いて検証し、現在作成中の、仮称ですが「新型コロナウイルス感染症神奈川県対応記録保健医療編」に残していきます。
最後に、今後の運用指針等についてです。
今年度中に改定予定の「神奈川県感染症予防計画」の中で、宿泊療養施設の確保・運営方法や関係事業者との連携についても盛り込んでいきます。
また、ホテル等への協力依頼は、すでに一部では開始しており、今後、新たな感染症が拡大した際に、必要に応じて速やかに宿泊療養施設が確保できるよう体制を構築していきたいと考えています。

石川】残念ながら稼働率について御答弁がほとんど触れられていなかったが、施設等との連携は進めていくという前向きな答弁はいただいた。
今後の感染症対策の運用指針も、具体的な方法を検討して関係事業者との連携や協力を進めることは重要だと考えている。また、過去の経験から学び、次いつ来るかわからない将来の感染症への備えを強化するため、得られた知見を活かした適切な対策の策定が求められる。
そのためには、この施設を利用された方々や施設提供者などの意見を率直に伺うことが必要だと考える。そして、今回は宿泊療養施設に焦点を当てたが、これまでの県の医療支援、中小企業支援、協力金など、コロナ対策の取組についての検証と総括も要望しておきます。